審査では、様々な品質方針に出会います。
創業以来受け継がれた言葉をもとに作られた思いのこもったものや、「あれ?
なんだっけ」とマニュアルを開いて探しておられる状況までいろいろです。
そのような品質方針ですが、思わず「すごい!」と唸ってしまう会社に出会い
ました。その会社の品質方針には、商品を販売する商社に対すること、そして
その先で実際に商品を使用する消費者に対する心構えや考え方が示されていま
した。
その内容自体は、正直、それほど特別なものではありませんでしたが、
その運用が素晴らしかったのです。
経営者と幹部・部門長が、品質方針に従って事業運営しているのです、と、
書くと「当たり前!」のことですが、それを本当の意味で実践している会社は
多くありません。
その会社では、経営者や各部門のインタビューの中で、頻繁に品質方針の中の
キーワードが出てくるのです。例えば、品質目標の策定、不適合の重大性の判断、
是正処置の程度、顧客満足の把握など。
そして、インタビューの合間の雑談では、経営者からは「社員には、品質方針に
反してなければいいと常々言っているので、私の意見にも、結構、品質方針を
盾に言い返してきます(笑)」とお聞きし、社員からは「あんな怖い顔した社長
ですが、品質方針に反してなければ怒りません。反すれば怖いですが(笑)
だから私達は自分で多くのことを判断できます」とおっしゃるのです。
経営者と社員が「権力」や「主従」の関係で結びついているのではなく、
「企業理念」で結びついている状況に感銘を受けました。
なかなか簡単なことではなく、一朝一夕にできることでもありませんが、品質
方針の素晴らしい運用事例であり、企業運営の一つの目指すべき姿だと感じました。