「企業は人なり」と言われるように人材育成は、どの企業にとっても重要です。
今回は、ISO要求事項の中で重要でありながら十分に活用されていないと感じる
「力量」について取り上げます。
多くの企業では、製造や設計など「技術的」な力量だけを対象とし、営業部門
や購買部門その他間接部門などは対象としていません。
あまり注目はされていませんがISO9001の2015年版改定において、「力量」に
関して変化があったのです。「QMSの成果や有効性に影響を与える」と
表現されており、決して製造や設計だけに限定されていません。
規格の解釈は別にしても、製造や設計だけに限った力量管理は「実態」と合致
していないと感じています。例えば、審査で営業部門に必要な力量について
お聞きすると、製造や設計に関する知見、法令に関する知見、業界に属する
知見、見積に関する知見等々多くの要素があり、かつ経験年数などにより各人
の習得度も様々です。
購買部門やその他の間接部門でも、管理項目の多い少ないはありますが、同様に
存在します。極端に言えば、力量管理の項目が無いのであれば「誰でもいい」と
いうことになってします。
ではなぜ、製造や設計に限定して運用しているのかを考えると、一つは力量管理
を狭くとらえていた、もう一つは対象を広げると大変だからではないでしょうか。
そして、後者の理由が多いと思います。
ですが、部門として「どのような力量」が必要であり、誰が「どの程度習得」
しているかを把握して、それを本人と共有することで「どのように成長」して
行くかを認識することは非常に価値あることだと思います。
審査で目にするシンプルな事例をご紹介します。
まずは、縦横の表を作り、例えば縦軸に「必要な力量」を書き出し(まずは
数項目でOKです。10項目もでれば◎です)、横軸に所属員の名前を書く、
そして、習得度を○×(或いは、◎○△)で記入する。これで立派な力量管理
表の完成です。
大事なのは「見栄え」を気にした立派な項目にしないことと、項目を増やし
過ぎないことです。ポイントは、「成長させる側」の管理職目線ではなく
「成長する側」の所属員の皆さんの目線で考えることだと思います。
そうすると、妥当な表現や項目数(多過ぎると意識が薄れる)が見えてくる
のではないでしょうか。
是非、身の丈に合わせてISOの要求事項「力量」を活用して下さい。