ISOマネジメント研究所では、ISO9001,ISO14001,ISO27001,ISO45001,Pマーク等の第三者
認証の取得・維持のための支援をしています。2001年9月に創業し、
中小企業をメインに支援
企業は1000社以上あります。お客様のリピート契約率は、約8割です。単なる認証取得および
維持だけにとどまらず、組織や従業員にとって役に立つ仕組みづくりを
支援いたします。

外資系企業の日本法人を審査することがあります。その際、日本企業との違いを
感じるのは審査を受けるスタンスの違いです。

端的に言うと、「審査のための準備」を殆どしていません。そもそも、審査を
意識して「仕組み」を作ることを殆どしていません。どちらも「殆ど」と書いた
のは、4章・5章・9章などではある程度外部審査に向けた対応が必要になるから
です。

ですが、営業・設計・製造など実業務の8章にあたる部分では「私たちのやり方が
規格に合致しているかどうか、どうぞ見てください!」といった雰囲気です。

とてもウエルカムな雰囲気である分、指摘や助言にも抵抗なく耳を傾けます。
そして、自分たちの役に立つと判断すれば受け入れる、そうでなければ受け入れ
ない、がハッキリしています。

言い方を変えると「業務の中から規格に該当する箇所を探し出し、判断するのは
審査員の仕事」であり、事前に組織側で「回答を準備(探し出して)」しておく
ことはないのです。審査員にとっては、集中と緊張を必要とする審査となります。

ここまで読まれて「国内企業でも同じように集中し緊張すべき」「組織に回答を
準備するように仕向けたのは審査機関」という感想をお持ちになる方が多いと
思います。まさにその通りだと思います。

私自身、上記のような経験を通じて、審査員としてどうあるべきか、審査機関が
どうあるべきかを考えさせられました。

審査員・審査機関は認証判定という権限を持つのですから、謙虚に汗をかき、
組織や世間から厳しく評価されるべきなのです。
 

「ISOのための記録作成が大きな負担」という課題を抱えている企業は多いと
思います。日常業務と密接な関係にあるQMSでは特に多いのではないでしょうか。

2015年に変わり「QMSと事業との一体化」「文書や記録への要求低減」が大きく
掲げられていますが、やはり多くの企業が「ISOのための記録作成」に時間を
割かれているのを感じます。

では、どうやって記録作成の負担を減らすのか。私も時には「思い切ってこの
記録を無くしてみてはどうですか」と言ってしまうのですが、企業のISO担当者
にとっては無くすことの不安が大きいことはお察しします。

そこで、提案したいのが「記録の統合」です。一つの要求事項に1枚の記録様式を
当てているケースが多いのですが、結果として同じ情報を重複して記入することに
なったり、記載する部分が非常に少なく空白の多い記録になったりしていることが
あります。

仮に、同じ量を記載するとしても、2枚の記録を作成するのと1枚を作成するのでは
時間的にも精神的にも変わってきます。

記録の統合であれば、記録を廃止する不安を抱えることなく負担軽減が図れます。
限られた様式のスペースに統合する過程で、不要な記入欄が見えてきて整理(削減)
が進むことも期待できます。

私が統合できる可能性を感じている一例は、以下があります。

■4.1課題+4.2ニーズと期待+6.1リスクと機会
■8.2.2顧客要求+8.2.3レビュー記録
■8.3.2設計計画+8.3.4レビュー・検証・妥当性確認記録
■8.3不適合処置記録+10.2是正処置記録

思いつくままに書き出しましたので、個々の統合是非は企業のQMS運用状況や
考え方に合わない可能性もありますが、逆に他にも統合できる記録は多くある
と思います。

挙げた一例が記録統合を検討する際の参考やヒントになれば幸いです。
 

2015年版へのマニュアル改訂も終わり、新しいチェックリストでの内部監査も
始まっていると思います。今回は、内部監査における焦点の絞り込みについて
つぶやきます。

まずは、多くの会社で採用されている規格要求事項の全てを毎回チェックする
方法ですが、少なくとも規格文にはそのような記述はありません。ですが、
「そうしなければならない」と思い込んでいる、あるいは慣例でそうしている
ことが殆どで、必要性を感じて全てをチェックしていることは極希です。

そのような思い込みや慣例を、一度クリアにしてみて下さい。一気に自由度が
高まります。ここでの自由とは、規格要求事項のどの項目を監査するかの自由
です。言い換えると、自社のどの仕組みを監査するかの自由です。

自由になった内部監査で重要なのは、焦点の絞り込みです。忙しい業務の中で
時間を割く訳ですから、自社にとって有効な時間にすべきです。

では、何を基準に焦点を絞り込むかですが、私がお勧めしたい第一の選定基準は
「成果が出ていない/活用できていない仕組み」です。

「問題のある仕組み」や「不適合の原因となった仕組み」が思い浮かんだ方も
多いと思いますが、私はその基準は2番手でも良いと考えています。なぜなら、
そのような仕組みは問題や不適合が見つかった時点で既に手を付けているで
しょうし、そうした方が良いからです。

「成果が出ていない/活用できてない仕組み」を基準にすると、監査の項目を
選ぶ際にもそれぞれの仕組みの意図や目的を意識することができます。

監査においても「どうすれば成果が出るか/活用できるか」の視点となり、
○×式の適合性だけの監査から、有効性を高める監査となります。

例えば、ISO9001では「設備管理」「購買先の管理」「組織の知識」など形骸化
しやすい仕組みにも焦点が当たるかも知れません。ISO14001では「環境目標」
を事業・実務の課題と一致させる、或いは「環境に関する力量管理」の内容を
見直すなども考えられます。

ここで少し冒頭の話に戻りますが、毎回全ての項目を監査しないと、場合によっ
ては数年間監査を受けない項目がでてくる可能性があります。

いくら規格が明文化していないとはいえ、審査員としても(少し立場論的ですが)、
組織にとってもあまり良いとは言えない状態です。そこで、外部審査のサイクル
と合わせて3年間で全部の項目を1度は監査する方法があります。もちろん、2度
3度と監査する項目があってOKです。

慣例的な実施から自由度の高い内部監査に変えると、事務局にとっては思慮・検討
する負担が増えるかも知れません。ですが、ISO活用の要ともいえる内部監査に
手間をかけることは重要であり、効果も大きいのです。
 

今回は、ニュースで話題になっている自動車メーカーや鉄鋼会社の法令違反に
関してつぶやいてみます。

どちらのケースでも聞かれるのが「現場任せ」という言葉です。ある程度の
役職者まで関与しているようですが、少なくとも経営層、或いはそれに続く階層
の視点では「現場任せ」と言えるでしょう。

審査では、大規模な組織であっても現場から経営層までが審査対象となります。
そのため、幾重にもなった組織階層を短期間に登ったり下ったりします。

階層や部門が多い組織では、特に、方針・目標の展開、或いは顧客情報・現場
情報などの内部コミュニケーションに焦点を当てることが多くあります。

そのような審査において、時に感じるのが「ある境界での途切れ」です。特に、
管理階層における現場状況の認識の「途切れ」です。

生産量や経費などの経営数値は会議資料で認知していますが、どんな事で困って
いるのか(若手の育成が進まない、顧客流出一歩手前のミスが多い、設備異常が
多いなど)、或いはどんな改善が進んでいるのか(掲示板の工夫、ミーティング
の工夫、手順書の工夫など)の少し細かい話になると通じないことがあります。

もちろん、技術的な事も含めた個々の事象を全て把握することは難しく、大規模
組織の運営においては非効率とも言えます。ですが、少なくとも「雰囲気・空気
感」は認識しておく必要があると思うのです。

極端にぷっつりと「途切れた」階層に出会うと、何をしている会社なのか判らな
くなる程です。審査員としてだけでなく「虚しく」感じる程です。

一連の事件では「現場」だけが悪者にならないで欲しいと願っています。現場の
雰囲気や空気感を感じずに、数値的な要求だけを突き付けることの弊害を論じて
欲しいと思うのです。

今回の事件における詳細は把握していませんが、一般論としては、審査機関も
今回のような事件を未然に防ぐ責任の一端を担っています。そのことを、私自身も
改めて肝に銘じたいと思います。
 

前回のつぶやきで「プロセスアプローチ」という言葉を使いましたが、ISOを解り
難くしている要素の一つといえるでしょう。

審査員の間でも、この言葉をISO運営のための「思想」や「理念」のように複雑に
解釈し理解しようとする傾向があります。そのため、様々な解釈が審査の場面で
企業に語られることになり、結果として混乱を起こしています。

この混乱から企業が脱するためには、ある解釈を聞いたときに「その解釈が、ど
こで活かせて、どんなメリットがあるか」で選別することだと考えます。具体的
なイメージができない場合は、自社(自分)には合わないとバッサリ(笑)切り
捨てて他の解釈に耳を傾けた方がよいと思います。

バッサリ切る方法をお伝えした上で、覚悟して私の解釈をつぶやきます。

私は、プロセスアプローチを「仕事の流れを考えること」といつもお伝えしてい
ます。一番利用しやすい場面が内部監査です。例えば、営業部が作成した顧客要
求をまとめた書類が内部監査員の前にあるとします。記入欄が全て埋められてお
り、印鑑漏れもないので問題なし。

となりますが、ここから「仕事の流れ」を考えてみます。その書類作成の「前」
にはお客さんがいます。そこで、まずは記載された内容をお客さんの視点で見て
みます=自分(お客さん)が望んだことが表現できているか。もしかすると、
曖昧であったり言葉足らずがあるかも知れません。

次に、書類作成の「後」を考えてみます。その書類を基に物を作る人の視点=物
作りに必要な情報になっているか。もしかすると、もう少し詳しい情報が必要か
も知れません。

このように、目の前にある資料作成という仕事を「単独」に考えずに「流れ」で
考えると、より多くの改善につながる発見が期待できます。

前回、品質目標を達成するための対象を「部」の人員に限定しないことをお伝え
したことも、目標を達成するために仕事・作業・活動の「流れ」の中にいる人を
考えると、必ずしも一つの「部」に属しているとは限らない、と言い換えること
ができます。

少し長くなりましたが、皆様にとって「しっくり」くる解釈を探してみてください。
 

営業部の人員が3名、或いは2名、或いは1名といった会社は少なからずあると
思います。特に、建設業や社外で提供されるサービス業では、専務や常務などの
営業部長と電話受付1人といったケースも珍しくありません。

その場合、大型案件は営業部長が追いかけますが、小規模案件や継続案件などの
営業活動は現場に出ている実動社員が施工やサービス提供を兼ねながら行ってい
ます。

ですが、品質目標は営業「部」で立案する為、現場に出ている実動社員の活動が
対象から外れてしまいます。結果、営業部長一人の活動計画になるため、立場的
なこともあり表面的で具体性に欠ける内容になりがちです。

このような時にこそ、プロセスを意識した目標と活動計画の立案が有効ではない
でしょうか。営業活動というプロセスに従事している(工事部などの)実動社員
も巻き込んだ「営業部」の品質目標にするのです。

例えば、既存顧客の案件掘り起しのためのパフレットを作成・利用して情報収集
を行う活動など、活動の幅が広がり、具体性のある活動立案にもつながります。

営業部に限らず、審査対応を含む対外的な面から幾つかの「部」を設けながら、
社員の多くが兼務となっており「部」の対象者が曖昧になっているケースもある
と思います。

プロセスアプローチという言葉に対しては、「難しい解釈論が多くて、よくわか
らない」という趣旨のことをよく聞きます。ですが、どのような解釈であっても
企業のISO運営にとってメリットを産み出すことが必要であり、上述の考え方も
そのようなプロセスアプローチのひとつです。
 

品質・環境ともに新規格で加わった、外部と内部の課題、利害関係者のニーズ
と期待、リスクと機会の決定ですが、皆さんの組織では見直し対象になっている
でしょうか。

規格では監視、レビュー、維持などの文言で、見直しの必要性が示唆されていま
すが、実態としては一度決定されると固定なっているケースが多くあります。

課題・ニーズ・期待・リスク・機会を「客観的な事実」と考えて固定化している
と思われますが、私は「主観的な認識」と考える方がよいと考えています。

例えば、目標の設定や運営に入った段階で、新たな課題が見つかったり、顧客
ニーズの違いに気付いたり、別のリスクや機会が見つかったりすることもあると
思います。

朝令暮改が過ぎるのもよくないですが、システム全体の方向性を決める重要な
要素ですから、変更することに躊躇するのは「ISOの仕組みと実態との合致」
の観点からもマイナスです。

他の仕組みや記録に対しても、実態に合わせて柔軟に変更や修正を加えることが
「ISOの形骸化」を防ぎ「活用」するためには重要です。
 

2015年版への対応にあたり「予防処置」の仕組みを無くしてしまう組織を多く
見かけます。予防処置がリスク管理に変わったという理解によるものです。
その理解は間違っていないのですが、勿体ないと感じることがあります。

それは、社員の方々が自分達の役割(予防処置)から上層部や管理層の役割
(リスク管理)に移ったと感じてしまうことす。

確かにリスク管理に対する規格要求は、上層部や管理層での実施を思わせる
表現になっていますが、規格の解釈論は別にしても、階層を問わずリスクを
意識して対処することは重要です。まさに予防処置の考え方と同じなのです。

とはいえ、予防処置の仕組みが上手く活用できていなかった組織が多かった
ことも事実です。

少し話がそれますが、予防処置の仕組みとは別に(ISOの仕組みとも別に)ヒヤリ
ハットの仕組みを運用していた組織が多くありました。その頃から同一の仕組み
として運用できないものかと思っていましたが、予防処置に対しては規格が細か
に要求していこともあって比較的手軽に運用できるヒヤリハットは別に運用した
方がよい状況もありました。

その細かな要求がなくなった2015年版では、ヒヤリハットをリスク管理の仕組み
の一部として組み込んではいかがでしょうか。以前よりは組織の実態や必要度に
応じた自由な運用が、可能になるでしょう。もちろん、ISOの仕組みとは別に運用
する方がもっと自由ではありますが、外部の目線で意見を受けるメリットがあり
ます。

これまでヒヤリハットの仕組みがなかった組織でも、2015年版への対応にあたり
取り入れることを検討してはいかがでしょう。規格の要求を受け身ではなく、
組織の活性化に利用することが重要です。
 

ISO9001/ISO14001共に2015年版ではトップマネジメントのリーダーシップが強調
されています。審査においても、「経営者は、具体的に何をすればいいのか」と
聞かれることがあります。

その質問に対しては、規格が要求している各事項を説明することになるのですが、
時に少し脱線したお話をすることがあります。

それは、「重要なのは、経営者がISOの仕組みに期待し続けることは何か」という
ことです。審査員としての立場を超えて経営者に進言するつもりは毛頭ありません
が、その重要性を強く感じているのです。

経営者が「期待し続ける」ことで、ISO事務局や推進者には活気が出て、社内にも
参画意識が生まれ、仕組みが改善されて行くと考えるからです。逆に、経営者が
「ISOで事業上の成果を出すのは困難だ」或いは「無理だ」と諦めてしまえば、
ISOが形骸化に向かう可能性が高くなります。

審査は、経営者から始まり部門や現場へと組織階層を渡って行きます。経営者が
ISO活用に意欲的な場合は、相当な階層までその意思が浸透しています(勿論、
全階層まで金太郎飴のように浸透しているような素晴らしい会社もあります)。

ですが、経営者がISOの活用に期待や興味を失っておられると、途中の階層から
盛り上がることは非常に少ないです。

このことは、経営者の方々の問題だけではなく、ISO審査員や審査機関の問題でも
あります。ISO審査員や審査機関は、規格要求事項への適否判定だけでなく、審査
を通じて「ISOが企業に有用な成果を出し続ける」ことを達成する役割と責任が
あると考えています。
 

ISO9001/14001共に2015年版では、組織の「外部や内部の課題(4.1)」
や利害関係者の「ニーズ及び期待(4.2)」を明確にする、或いは決定することが
求められています。

これらは、要求事項としては、新しいのですが、実際の企業にとっては当然の
ように考えていることと言えます。お客さんや社内のことを一切考えずに事業を
運営することはないからです。ただし「明確」に「決定」されているかについては、
いかがでしょうか。

果たして、社長の頭の中にあることと、幹部社員の頭の中にあること、社員の頭の
中にあることがどの程度一致しているでしょうか。

4.1、4.2に関して「文書化」の要求はありません。ですから、例えば「私(社長)
の頭の中で明確」と言われれば(審査における判定はここでは論じませんが)、
個人的には「とても活用甲斐のある要求事項なんですが」と思ってしまいます。

一年に一度、或いは半年に一度、或いは毎月など実情に合ったタイミングで、組織
の状況を「文字」で明確にして、共有することをお勧めします。規格が「要求して
いる・要求していない」だけを判断基準にしてしまうと、少し勿体ないと思います。
 

製造現場の審査では、不良品の再発防止対策を含めて「作業手順」や「検査手順」
の順守状況を確認します。そこで、思わず多くの手順不徹底(簡単に言うとルール
違反)が見つかることがあります。

例えば、手順で「製品の裏面もチェックする」となっているが、実際の作業では
確認せず、検査記録には裏面OKとなっている。或いは、作業開始時に全ての
製品検査記録(チェックシート)が合格と書かれている。或いは、「○○作業時
に製品を重ねる際は、保護シートを挟む(キズ防止)」となっているが実施され
ていない、などです。

ひとつひとつは小さなことかも知れませんし、製品不良やクレームに直結する
ことはないでしょう。ですが、私が気になるのは「製造現場の雰囲気」です。

言葉にすると「一応手順やルールはあるが、まあまあでいいだろう」「実際に
手順やルール通りにすると作業が進まないからいいだろう」「結果として全部
合格になるのだから何時検査記録を書いても同じだ」「いつもの作業で製品が
キズついたことはないから大丈夫だろう」などの「雰囲気の蔓延」です。

そして、最も気になるのはそのような「雰囲気」を管理者が感じているかどうか
です。前段が長くなりましたが、これからが今回のつぶやきの本旨です。

該当部門の責任者から、「私自身も課題が多いと感じた現場審査の後に、毎日
巡視していますが、限られた審査時間でこれほど見つかるのは正直ショックです」
と言われることがあります。

「どうして普段見つけられないのでしょう」と質問を受けることもあります。
その際、実際の現場の状態にもよりますが、多くの場合「審査員は立ち止まって
見るからかもしれません。それも、時には数分」とお伝えしています。

私の企業での経験でも現場巡視で「立ち止まって見る」ことは少なく、仮に立ち
止まっても例えば「3分」見ることがどれほどあったでしょうか。まさに「巡る」
ことが目的になっていました。

作業の横でじっくり「見る・見られる」ことは、お互い気まずいかも知れませんが、
時には重要であり多くの効果があります。

時には「審査員さんは、よく細かいところまで見ていますね」と揶揄されて残念
な気持ちになることもありますが、私は現場審査を重要視しています。もちろん、
良好な雰囲気が感じられることも多く、その際は心よりの賛辞を贈ります。

皆様の会社の「現場の雰囲気」はいかがでしょうか。
 

熟練者からの技術伝承など、世代交代は組織にとって大きな関心事です。
今回は「ISOキーパーソン」の世代交代を取り上げてみます。

皆様の会社のISO、キーパーソンはどなたでしょうか。必ずしも管理責任者
や事務局長などの立場にある人だけなく、実際にマニュアルなどの文書作成や
審査員対応を行っている方をISOキーパーソンとして考えてみます。

多くの会社では計画的に交代が進められていますが、突発的な事情で引継ぎも
ないまま交代という事例もあります。

それはISOに限らず会社の本業でも起こり得ることであり、様々な対策を取って
いると思いますが、意外とISOキーパーソンに関しては検討順位が低かったり、
順位外だったりします。

突発的な交代はもちろんですが、計画的であっても世代交代に備えていない
場合は「混乱」を生じます。

では、起こり得る「混乱」の程度を現在のISOキーパーソンの「貢献度」から
見てみます。「貢献」といっても様々な意味がありますが、ISOの効果的な
活用の視点からみると「ISOを組織全体の活動に展開=ISOの仕組みと実務が
合致」の状態を作り上げることがISOキーパーソンとしての「貢献」の一つ
ではないでしょうか。

それが実現していると、仮に急に交代する事態となっても、いい状態は継続
するでしょう。

逆に、「貢献」のマイナス面でもある「依存」の状態を考えてみます。それは、
審査で問題が見つかっても審査員からの指摘をISOキーパーソンが「盾」と
なって取り繕ってしまう状態。結果として改善は進まず、それが続くと、
システムが審査員対応に向かってしまい実態と離れてしまいます。
(私達審査員も、そのような「盾」を組織が準備しようと考えなくて済むよ
うな丁寧で、紳士的で、建設的な審査を目指さなければいけません)

そのような状態でISOキーパーソンが急にいなくなると、その後の運用、
少なくとも効果を上げる「活用」は難しくなります。

ISOキーパーソンの「あるべき姿」の話にもなってしまいましたが、「依存度」
が高いと思われる場合はそれを改善しつつ世代交代を検討する必要もあります。
ISOキーパーソンの世代交代の検討は、今の社内のISO運用を再確認する機会
にもなります。
 

「企業は人なり」と言われるように人材育成は、どの企業にとっても重要です。
今回は、ISO要求事項の中で重要でありながら十分に活用されていないと感じる
「力量」について取り上げます。

多くの企業では、製造や設計など「技術的」な力量だけを対象とし、営業部門
や購買部門その他間接部門などは対象としていません。

あまり注目はされていませんがISO9001の2015年版改定において、「力量」に
関して変化があったのです。「QMSの成果や有効性に影響を与える」と
表現されており、決して製造や設計だけに限定されていません。

規格の解釈は別にしても、製造や設計だけに限った力量管理は「実態」と合致
していないと感じています。例えば、審査で営業部門に必要な力量について
お聞きすると、製造や設計に関する知見、法令に関する知見、業界に属する
知見、見積に関する知見等々多くの要素があり、かつ経験年数などにより各人
の習得度も様々です。

購買部門やその他の間接部門でも、管理項目の多い少ないはありますが、同様に
存在します。極端に言えば、力量管理の項目が無いのであれば「誰でもいい」と
いうことになってします。

ではなぜ、製造や設計に限定して運用しているのかを考えると、一つは力量管理
を狭くとらえていた、もう一つは対象を広げると大変だからではないでしょうか。
そして、後者の理由が多いと思います。

ですが、部門として「どのような力量」が必要であり、誰が「どの程度習得」
しているかを把握して、それを本人と共有することで「どのように成長」して
行くかを認識することは非常に価値あることだと思います。

審査で目にするシンプルな事例をご紹介します。

まずは、縦横の表を作り、例えば縦軸に「必要な力量」を書き出し(まずは
数項目でOKです。10項目もでれば◎です)、横軸に所属員の名前を書く、
そして、習得度を○×(或いは、◎○△)で記入する。これで立派な力量管理
表の完成です。

大事なのは「見栄え」を気にした立派な項目にしないことと、項目を増やし
過ぎないことです。ポイントは、「成長させる側」の管理職目線ではなく
「成長する側」の所属員の皆さんの目線で考えることだと思います。
そうすると、妥当な表現や項目数(多過ぎると意識が薄れる)が見えてくる
のではないでしょうか。

是非、身の丈に合わせてISOの要求事項「力量」を活用して下さい。
 

審査では、様々なチェックリストを目にします。顧客要求の確認漏れを起こさ
ないためのチェックリスト、設計品質を確保するためのチェックリスト、中間
検査や最終検査のためのチェックリスト、設備点検のためのチェックリストなど
です。

その多くは、チェックボックス(□)にチェック者がレ点を記入する方法です。
皆様の会社で運用されているチェックリストのレ点の「筆跡」は、どうでしょ
うか。時には、凄まじいスピードで記入された思われる筆跡でチェックボックス
をはみ出すほどの事例にも出会います(チェックボックスの数とレ点の数が合わ
ないことも)。

もちろん、スピードやレ点の書き方そのものは本質ではありません。本質は、
チェックすべき内容を確認することであり、その証拠を残すことです。ですから
審査では筆記だけから安易に「本質」の良否を判断することはできませんが、
有効性が気になります。

有効性のないチェック行為は、時間のロスだけでなく、チェックの「行為」だけ
で品質確認したことになってしまい本質的な品質確認がおろそかになる可能性も
あります。

それを防ぐための必要なのは、第一にはチェック者の意識・認識を高めること
です。ですが、精神論だけでは難しいことも事実です。

これまで目にしてきたチェックリストで、「私がチェック者なら嫌だ」と感じた
チェックリストは2種類です。一つは、チェック内容の記述が長文で読むのに
時間がかかるもの。もう一つは、チェック数がとても多いものです。

では、どの程度が「長文」で、どの程度で「多い」となるのか?となりますが、
どうしても相対的な判断となります。机上で設計の成果物を、じっくり確認する
ならある程度長文でもチェック数が多くても大丈夫でしょう。ですが、始業前の
設備点検項目が30項目(もちろん設備にもよりますが)あると嫌かも知れません。

是非とも社内のチェックリストについて「チェック作業の実態」と「チェック者
の本音」を調査してみてはいかがでしょう。肝心なのは、「もし、私がチェック
を行う立場なら」です。
 

現場における作業や加工において、開始時や中間の品質確認記録など
組織が決めたルールに沿った記録を見せていただきます。その際、記録する
「タイミング」に様々な状況があり、その状況に対する組織からの回答も様々
です。

例えば、既に作業も終盤にかかっている状況で開始時の品質確認記録が記され
ていない、或いは次の作業に取り掛かっていても、前の中間や最後の品質確認
の記録が作成されていない、このような場合、記録の多くは幾つかの項目にレ点
を入れるチェック式です。

さて、このような状況であっても一概に正しくないとは言い切れません。作業
担当者や監督者から「時間のある時にチェックします」「午前中の分をまとめて
チェックします」「終業時にチェックします」「チェックするタイミングは作業者
に任せています」などの説明があったりもします。

正直「苦し紛れの説明では?」と感じることも多いのですが、そもそも記録する
タイミングを意識していない組織も少なくありません。

規格では、タイミングに対する要求はありません(もちろん、組織がタイミングを
決めていて、それに反していれば不適合の候補となり得ます)。ですが、審査で
指摘されるか否かは別にしても、不良品の発生防止、工程戻りの防止、チェックの
形骸化の防止、作業者の意識維持など、QMSにとっては見過ごせない要素です。

もし、品質確認のタイミングについてのルールがなく、あまり注目してこなかった
のであれば、是非実態を把握してみてはいかがでしょうか。内部監査の計画において
「焦点」として行うのもよいでしょう。「記録があるか否か」の適合性の視点から、
有効性への視点の転換です。
 

審査では、様々な品質方針に出会います。

創業以来受け継がれた言葉をもとに作られた思いのこもったものや、「あれ?
なんだっけ」とマニュアルを開いて探しておられる状況までいろいろです。

そのような品質方針ですが、思わず「すごい!」と唸ってしまう会社に出会い
ました。その会社の品質方針には、商品を販売する商社に対すること、そして
その先で実際に商品を使用する消費者に対する心構えや考え方が示されていま
した。

その内容自体は、正直、それほど特別なものではありませんでしたが、
その運用が素晴らしかったのです。

経営者と幹部・部門長が、品質方針に従って事業運営しているのです、と、
書くと「当たり前!」のことですが、それを本当の意味で実践している会社は
多くありません。

その会社では、経営者や各部門のインタビューの中で、頻繁に品質方針の中の
キーワードが出てくるのです。例えば、品質目標の策定、不適合の重大性の判断、
是正処置の程度、顧客満足の把握など。

そして、インタビューの合間の雑談では、経営者からは「社員には、品質方針に
反してなければいいと常々言っているので、私の意見にも、結構、品質方針を
盾に言い返してきます(笑)」とお聞きし、社員からは「あんな怖い顔した社長
ですが、品質方針に反してなければ怒りません。反すれば怖いですが(笑)
だから私達は自分で多くのことを判断できます」とおっしゃるのです。

経営者と社員が「権力」や「主従」の関係で結びついているのではなく、
「企業理念」で結びついている状況に感銘を受けました。

なかなか簡単なことではなく、一朝一夕にできることでもありませんが、品質
方針の素晴らしい運用事例であり、企業運営の一つの目指すべき姿だと感じました。
 

不適合について書いてきましたが、今回の内容はグッドポイントについてです。
審査機関によって呼び方は様々かも知れませんが、不適合の逆の「良い状態」
です。

個人的には、不適合以上に判断に迷う時もあるのがグッドポイントです。
もちろん、審査機関としての定義及び教育が行われていますが、
私は、(正しい表現ではないかも知れませんが)組織に合わせて判断すべき
だと考えています。

グッドポイントは、組織の良い取り組みや実績にスポットライトをあてる
ことで、更なる活動の推進を後押しするものであると考えているからです。

例えば、以下のようなケースがありました(実例をベースにしていますが、
そのまま書くことはできませんのでアレンジしています)。


●ISOの形骸化という問題を抱えてきた組織が、新たな事務局のもとで
「身の丈のISO」がようやく動き出した。例えば「内部監査の後に全ての
監査員が集まってそれぞれの指摘事項を発表し、その視点や指摘内容について
お互いに意見し合う取り組みを今期から始めた」状態。
まだ成果が出ていなくても、動き出した活動への応援です。

●「身の丈のISO」を運用してきた組織が、大きな成果を残した。
例えば「非常に難易度の高い製品の不良率低減を品質目標に掲げて取り組み、
3年かけて半減させた。また、その活動記録からは真摯に取り組む姿勢が
感じられた」状況。運用レベルの高い組織にとっては、ある意味当たり前の
活動かも知れませんが、客観的にみて感じる賛辞です。

●活動としては平凡であっても、組織としてやっていなかった活動を一つの
工場で始めた。例えば「作業者が順番に過去に自分が経験してきた失敗や
教訓を、毎週月曜の工場朝礼でホワイトボードを使って出来るだけ詳しく
全員に伝える活動が1年継続している」状態。実施している工場への賛辞と、
他の工場への展開の提案を込めます。

また、経営者や事務局から安易なグッドポイントを挙げて欲しくないと
要望されたり、逆に「是非、○○の取り組みを見てあげて欲しい」とPR
とも取れる(笑)お話をお聞きしたりします。

時に、審査アンケートで「グッドポイントの判断基準が審査員によって違う」
と苦情になることがあります。不適合とは違う前向きなことですから、
我々審査員も丁寧に経営者や事務局と意思疎通を図ることで、
組織のプラスの原動力にするべきだと思っています。
 

前回、「不適合となる条件の再確認」と「足し算でスリム化」について
つぶやきました。その際、不適合の可能性がある事例を挙げました。
今回は、その他の事例も紹介してみます。

●是正処置の効果の確認の未実施:

以前、漏れなく且つ効果的に行う方法をつぶやきましたが、
予定日を相当超過したり、予定がなくても長期間実施されていないと不適合
となるケースがあります。

●測定装置の校正期限切れ:

確実に行っている組織が多い反面、うっかり期限切れとなるケースもあります。
期限切れのまま最終試験が行われているというより判断が厳しくなります。

●購買先への対応未実施:

購買先の評価の点数などで教育指導を行う基準を下回っているにも関わらず
対応が漏れているケースがあります。この場合、そもそも仕組みの有効性
(必要性)にも課題がありそうです

●マネジメントレビューにおける前回指示のフォロー未実施:

インプット情報として扱われていないケースがあります。
別の機会でもフォローされていればいいのですが、まさに「指示しっ放し、
受けっ放し」になっている事例があります。

●設計の管理未実施:

検証やレビューなど一切行っていない事例もあります。
なぜ一切?と思われるかも知れませんが、実際の管理業務とISOの二重管理
となっている場合に「ISOのための記録を作り忘れ」てしまうのです。


以上の通り、「仕組みの有無」ではなく「仕組みの実施不備」が多く、且つ
「実態とあっていない」「効果や必要性を感じていない」という身の丈に
あっていない事例が目立ちます。

もちろん、「うっかり」してしまうことはあるでしょうが、不適合の状態が
見つかった場合に「実施しなかった」ことばかりを責めたり反省したりする
のではなく、「実施し難い理由」「実施していなくても気付かなかった理由」
「実施していなくても不都合が起こらなかった理由」を探ることが次のステップ
につながります。
 

前回のつぶやきで紹介した「この活動は、どのような状態であれば不適合と
なりますか?」の質問に対する私の回答です。審査の場面では、個別事象へ
の断定的な言及は難しいので、基本的な考え方をお伝えしました。

まずは審査において不適合となる条件の再確認です。

条件は2つ、
①規格が「すること」と要求したことを「実施していない」
②自社で「します」と決めたことを「実施していない」です。

どちらも「実施していない」場合に不適合となるのです。
「どのレベルで実施するかどうか」を検討している時点で「実施する」する
ことが前提ですから、原則として不適合となることはないのです。

原則と書いたのは、なんでもかんでも「実施すればOK」とは言い切れない
からです。そこで自分達で「このレベルでは、自分が審査員でもNGは出し
たくなるだろうし、役に立たない」という最低レベルを設定してみます。

例えば、力量評価で説明すると製造部員の社員名簿に「○×」を書くだけ
などです。(あくまで例えなので、組織によっては最低レベルとは言い切れ
ません)

その最低レベルに「足し算」して行くのです。
力量評価では、各部員が従事する製造装置ごとに「○×」評価する、
或いは「○△×」の3段階で評価するなどでしょうか。

この「足し算」とは逆に、現状からの「引き算」で考えると、
抜本的なスリム化は難しくなります。
例えば、各製造装置や作業毎に数十項目で10段階評価している現状の
仕組みからの「引き算」です。
(この状態もすべての組織でやり過ぎという訳ではありません)

「不適合となる条件」に基づく最低ラインを考えて現状と比較することは、
特に長年ISOを運用している企業にとっては、「新鮮な気づき」を
与えてくれます。

それが、審査員と対等に渡り合って、自社のISOの価値を
高めることにもつながります。
 

先日の審査での出来事です。
事務局や各部署の審査で、折に触れて「この活動(又は規格要求)は、どのような
状態であれば不適合となりますか?」と質問されるのです。

実はこの話には前段があります。審査初日の打ち合わせ時に事務局の方からの
お話がそれです。自社のISOの仕組みが「身の丈」にあっていない肥大した仕組みで
あることを苦慮しておられました。

もう少しスリムにしたいと考えて各部門とも協議をするのですが、
いつも「審査で不適合になるかも」という不安がスリム化の妨げになってしまう
とのことでした。

そこで、次回の審査で「不適合の基準ラインをじっくり聞いてみる」ことに
したそうです。不適合にならないギリギリのラインで簡単ISOを狙おうという
考えではなく、「身の丈」にあった仕組みするためにまず「敵を知る」という
前向きな考えなのです(もちろんISOは敵ではないのですが)。

と言うことで冒頭の質問となるのですが、お考えには賛同できても「仮定」の
条件でむやみに判定をお伝えすることは審査員の立場上として難しく、
正直苦慮しました。

ですが、可能な限りご協力させていただきました。このような前向きな活動への
苦慮であれば喜んでお受けしたいと思った審査でした。
 

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