審査の中で、改善に対する貴重な考え方を聞くことがあります。

今回は審査先でお聞きした「クレーム対策は、さかのぼりが重要」という考え方についてつぶやきます。

クレームの発生原因においては、なぜなぜ分析が有名です。

その掘り下げにおいては(「下げ」という表現が効いている訳ではないのでしょうが)、例えば製造部門の手順や装置や環境、或いは製造担当者の力量や教育や心理等に掘り下げることが多く、加えて、流出対策では製造の下流にあたる検査工程へと視点が移ります。

当然ながら設計部門や営業部門や顧客等と「さかのぼって」、その影響や要因を分析することも必要です。当の製造部門においても、担当者の上司をグループリーダーや課長や部長等と「さかのぼる」ことが必要です。

そのように考えると、「さかのぼる」発想、言い換えると直接の発生個所を中心にして、全方位に広がる「放射円」の発想で考えることが重要なのだと感じました。

 

現場審査で私が注視していることの一つが「裏と奥」です。
特に、環境のISO14001と労働安全衛生のISO45001では重視しています。

毒劇物を保管する施錠棚やクレーン用のワイヤー保管ラック、燃料等の可燃物倉庫、廃棄物置き場等々、決められた「場所」は概ね問題なく整理整頓されています。

しかし、施錠されていない棚の奥で古い毒劇物の瓶が見つかったり、保管ラックの裏に錆びたワイヤーが見つかったりします。

「今は使っていません」「中身はほとんど空です」「廃棄する予定です」などの説明を受けることもあるのですが、そのような油断は思わぬトラブルや事故につながります。

とは言え、日常において上司や管理者が、いわゆる小姑のように裏や奥を調べるのはなかなか難しいものです。内部監査員でも、やはり躊躇するのではないでしょうか。

私がそこで提案するのが、内部監査のテーマに掲げることです。
例えば、『危険源の徹底排除:目が届き難い「裏や奥」の総点検』等です。

それを社内にしっかりと周知すれば、内部監査員も「役割」として行いやすく、受ける側も嫌な思いをすることがないでしょう。

QC工程表は、ISO9001審査において「主役中の主役」でした。その良し悪しや原因は別にして、肌感覚として「審査における主役」ではなくなったと感じます。

審査を受ける皆様にとってもそうではないでしょうか。

しかし、数年前から続く品質不祥事と呼ばれる多くの事件をみると、QC工程表の存在意義や利用価値を強く感じます。

QC工程表を作る作業は、「本来はこうあるべき」を再確認することになります。そして、完成したQC工程表を製造部門のみならず営業部門や設計部門などの関係者が確認することで、より「正しい」姿となります。

多くの品質不祥事は、「知らなかった」や「うっかりしてた」ではなく、「本来はこうあるべきだが、止むを得ず」或いは「本来はこうあるべきだが、現状でも問題はない」などから始めったと思われます。それが繰り返し長く続くと、「これ(現状)が本来のやりかた」「このように教えてもらった」と常態化してしまうのでしょう。

審査でQC工程表のことを質問すると、「そういえば作ってたな・・・」「どこにあったかな・・・」「いまさらそんな基本的な確認をするのか・・・」と心の声が聞こえてきそうな状況がよくあります。

ですが、QC工程表と現状が異なっている状況もよくあります。ほとんどの場合は、異なっていても「問題ない」との結果になるのですが、それはコントロールされた状態とは言えません。

QC工程表を風化させない工夫として、新しい人材への教育に必ず使用する、或いは一年に一度は変更がなくても内容を再確認して発行日を更新する、などを行っている組織もあります。

是非とも、今一度QC工程表にスポットライトを当ててみて下さい。

審査機関に属する審査員の協力得て、掲載しております。

皆さんの会社を訪れる審査員。当然ながら、突然「今日から審査員です!」と言うわけではありません。必要な教育や訓練を受けて、それぞれの審査機関の認定基準をクリアして審査員となります。

では、その訓練課程、特に最初に一番苦労することは何だと思われるでしょうか?

あくまで、自身の経験と、訓練の一部に携わる経験からの感想とはなりますが、答えは「インタビューすること」です。

審査員を目指す多くの方が、企業において審査員と直接やりとりした経験をお持ちです。ですが、最初に痛感するのは「見るのと、するのは大違い!」なのです。

最初のインタビュー訓練でガツンと衝撃を受けるのです。

いわゆる項番審査と言われる、要求事項の順番通りに質問を重ねることならそこまで苦労しないかも知れません。

ですが、規格でも示されているプロセス・アプローチ=プロセス審査では仕事の流れに沿ったインタビューが必要です。

仕事の流れの説明を聞きながら、頭の中で該当する要求事項を意識して、適宜、質問を挟んで確認する必要があるのです。

目指すのは、説明する方が要求事項を意識することなく、普通の会話を続けながら、気が付けば審査が終わっている状況です。

インタビュースキルは基本の基本であり、その先の観察力や問題発見力など更に多くのスキルを身に着ける必要があるのですが、最初にして最大の壁と言えます。

次に審査員とお会いになる時「この人も最初にガツンと衝撃を受けたのかな」と心の中で思われると、少しは審査を受ける緊張が和らぎ親近感もわくのではないでしょうか。

 

ISO9001や14001では、その要求項目5章で「リーダーシップ」の発揮を求めています。

私自身もそうなのですが、5章に関する指摘事項が審査で示されることは極稀です。指摘があったとしても、社員の所持する品質方針カードが旧版だった、或いは掲示物が旧版だった等、あくまで「社員側」に向けたものであり、「トップマネジメント」に向けたものではありません。正直、トップマネジメントに向けて指摘を出すのはNGというのが不文律です。

5章の意図は「トップマネジメントは、組織の雰囲気作りに責任を持って下さい」ということだと考えています。

顧客重視、地球環境の保護、法規制の順守、責任と権限等のキーワードで、「日々の業務の目的が曖昧にならないように、迷走しないようにターゲットを示して、一人一人の意欲を引出して下さい」と言っていると解釈しています。「組織が正しく進むための雰囲気作り」です。

審査では、社員や部下を批判的に話す経営者や管理職がおられます。日々のご苦労、そして個々の成長を願ってのことと理解してお聞きしますが、時には「よりよい方向に向かうために、どのような雰囲気作りをされていますか」と水を向けています。

経営者に限らず管理職の方は是非、5章に書かれた要求事項を「自分の責任範囲で、正しい雰囲気作りが出来ているか」の視点で読んでみて下さい。新たな発見があるかも知れません。

ISO9001や14001では、その要求項目4.1、4.2で「組織を取り巻く内外の課題」と「顧客を含む利害関係者のニーズと期待」を明確にするように求めています。

多くの組織では、それぞれを文書化して年に一度更新しています。ですが、内容がまったく同じ、或いは文言や言い回しだけが少し変わっているだけの事例も多くあります。変化のない文書は、結果として社内で注目されることはなく、「審査員が見るためだけの文書」になりがちです。

「作成しても利用する場面がなく、意味を感じない」という意見も多いのですが、4.1、4.2に関する事項は(規格詳細は省きますが)、仮に漠然としたものであっても全ての経営者の中にはあると思っています。それを、少しあらたまった機会として整理して、明文化する意味は大きいと考えて
います。

4.1、4.2の意図として「明確にする⇒社内で共有する」ことがあると考えています。組織を取り巻く内外の状況を、経営者が「今」どのように考えているか、社内に示すことで、一人一人の目標や課題への納得感を増すことができます。

網羅的に作成しているため追加や削除が難しい場合でも、「内容自体には変化はないのですが、今年度は、これとこれに注目しよう!と、マーキングして社内に周知しています」
と活用している組織もあります。

ある中堅企業の審査でのことです。長くISOを運用しており、マンネリや形骸化を感じてきたため、ISOの仕組みに限らず「普段感じている社内ルールや仕組みの問題点」を社内アンケートで募っておられました。

社長曰く「想像以上にたくさんの意見が出ました。それも、一部の社員や部門に偏ることなく、たくさんの問題点や意見が…」

私は、「そんなに問題点があることがショックで…」と続くのかと思いました。

ですが、意に反して「まだまだ、会社が社員から“見捨てられていない”ということです」と喜ばしくおっしゃったのです。

審査を通して、活力のある・雰囲気のよい会社と感じていましたので、その理由がわかった気がしました。

「うちの社員は物足りない」「うちの若手は元気がない」等と、“見捨てるかどうかは会社側”との前提に立った発言はよく耳にします。ですが、最近は「人件費は経費ではなく投資」とも言われます。

会社・経営者・社員との関係をどのように考えるべきか、その素晴らしい事例に触れることができました。

内部監査で見つけた問題点を「不適合」にするか、「観察事項」にするかで迷います、と質問を受けることがあります。

「不適合」にすると厳し過ぎるかも知れないし、「観察事項」にすると甘いかも知れないとの思いからです。

実はこの迷い、審査員にとっても他人事ではありません。

規格要求事項と組織が定めたルールへの適合性と有効性を判断等と、定義はありますが、その判断では迷うこともあります。

冒頭の質問には、「確実に再発防止を行って欲しい問題点は不適合」と判断することを提案しています。観察事項に対しては再発防止をしないということではありませんが、例えば関係者への口頭指導等で済むと思われる場合等があたると考えます。

提案の観点は、「問題点」に焦点をあてるのではなく、「再発防止」に焦点をあてるということです。当然ながら両者は深く関係するので、単なる言い換えと感じるかも知れません。

ですが、問題点を挟んだ監査する側・受ける側の関係においては、問題点を責める雰囲気にならず、今後の改善に向けた前向きな雰囲気になると考えています。

私も審査員として迷う時があると書きましたが、その時に考えることは同じです。もちろん、認定を受けた外部審査員として従うべき基準等は多岐に渡りますが、「これから」に目を向ける基本的な考えは同じです。

内部監査は、ISOの為だけではなく、社内のコミュニケーションとして貴重な機会です。その在り方について、社内で広く意見を交わすことが更なる活用になると考えます。

審査中はもちろんですが、審査前後でも審査員との接点が多いISO事務局(以下、事務局)。当然ながら事務局は審査を受ける組織内にあるのですが、時折、その境界が明確に線引きされて組織から離れていると感じることがあります。

具体的には、各部門の審査において「この文書は(記録は)、事務局が作成しているので詳細は分からない。事務局に聞いて下さい」と回答を受けるケース等です。いわゆる偽造があれば不適合にもなり得ますが、仕組みとして事務局が担っていればそれも難しい。マネジメントレビューのインプット
資料に対して、トップ自らがそのようにお答えになることもあります。

「事務局まかせ」の運用です。精力的に活動されている事務局ならそうでもないのですが、ご苦労されている様子の事務局であれば同情すら感じます。結果として、マネジメントシステムの運用成果に結びつかない事例が殆どです。

事務局の構成員は組織の規模等により千差万別ですが、これまで出会った事例をもとに、どのような事務局であれば「事務局まかせ」になり難いかを挙げてみます(実事例として挙げますので、要素は重複します)。


1.複数の部門から選出された事務局:

同僚が含まれているため、他人事になり難いと感じます。また、各部門からの意見や要望も反映されやすいようです。合議制ではあっても、中心となる人物には幹部クラスが適任のようです。

2.幹部を中心に有望な若手で構成された事務局:

幹部への遠慮と、若手を無下に扱いにくい心理が、各部門・社員の参画意識を生むようです。

3.社長後継者が中心の事務局:

遠慮と親近感の程良いバランスが、社内の参画意識を生むようです。後継者自身にとっても、貴重な訓練・学びの機会になると考えます。


「事務局まかせ」が起こっているようであれば、事務局の変革は有効な一手と考えます。

 

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