ISOマネジメント研究所では、ISO9001,ISO14001,ISO27001,ISO45001,Pマーク等の第三者
認証の取得・維持のための支援をしています。2001年9月に創業し、
中小企業をメインに支援
企業は1000社以上あります。お客様のリピート契約率は、約8割です。単なる認証取得および
維持だけにとどまらず、組織や従業員にとって役に立つ仕組みづくりを
支援いたします。

私たち審査員にもISOで決められた従うべき基準があります(ISO19011:監査
の指針)。企業が行う内部監査にも適用することができ(あくまで指針として)、
研修機関やコンサルタントが行う内部監査員研修においても基準となります。

そのような「監査の指針」ですが、7.2.2 個人の行動に記載された監査員に
求められる資質13カ条が秀逸なのです。

なぜなら、審査員や監査員に限らず、社会人として或いは人間としても
“目指したい姿”が簡潔明瞭に整理されているからです。私のお気に入り5選を
ご紹介します。


1.倫理的である。公正である、信用できる、誠実である、正直である、そして
 分別がある。

2.心が広い。別の考え方又は視点を進んで考慮する。

3.適応性がある。異なる状況に容易に合わせることができる。

4.自立的である。他人と効果的なやりとりをしながらも独立して行動し、役割を
 果たすことができる。

5.改善に対して前向きである。進んで状況から学び、よりよい監査結果のため
 に努力する。


私も時に企業に対して、資質13カ条を含めて内部監査員の研修を行うことが
あるのですが、そのまま自身に求められる資質ですから、内心では少し緊張感
しながら話しています。新人社員は目指す姿の一つとして、ベテラン社員は自身を
振り返る指針として、得るものがあると思います。
 

ベテラン新人を問わず、小さな仕草や態度にこだわりを持った審査員は
多いです。そのこだわりの中で「見習いたい」と思うものをご紹介します。
「当たり前」と思われるものがあるかも知れませんが、あくまで私の感じる
「いいね!」としてお受け取り下さい。

審査員1:
審査のため工場内に入る時と出る時に、必ず立ち止まって足を揃えて一礼し
挨拶する。だれもが、入りながら「失礼します」の挨拶や、軽く会釈する
ことはしますが、丁寧な所作で行うと印象が違います。これは、工場だけで
なく各部門の部屋を訪れる際も同じです。

審査員2:
審査最終の報告会でプロジェクターを使用する場合、定型の報告書の前に
オリジナルのスライドを組み込み、「審査へのご協力の御礼」と合わせて
「社内ですれ違う人が丁寧な挨拶をされたこと」「工場周囲にきれいな花々
が植えられていたこと」「素晴らしい5Sが行き届いていたこと」など、
好印象だったことを1〜2行書き添える。

審査員3:
報告書に中で、現場インタビューに対応いただいた方のご様子を称賛する
表現を添える。例えば「ご自身の作業に自信と誇りをもっておられる様子を
感じました」「緊張なさるようなインタビューとなって申し訳ありません
でしたが、お聞きできた内容は御社の品質管理の高さを裏付けるものでした」
など、忙しいなか或いは緊張のなかでインタビューに対応いただいた方の
心情を思いやる。


審査員としての立場に奢る(おごる)ことが無いように自身を戒め、対応
いただく組織の方々への感謝の気持ちを忘れないためのこだわりだと感じ
ます。

残念ながら上記のような姿勢になっていない審査員が存在することは承知
しています。また、自分自身も常に省みなければなりません。「審査員」
としてだけでなく「審査を行う人」としても自身を磨いて行きたいと思い
ます。
 

審査員から「内部監査の計画では、重点的に確認することを明確に」と
いう言葉を受けたことはないでしょうか。規格が求めていることでも
ありますが、内部監査を活用するためには欠かせないポイントだと言え
ます。

例えば、「製造部の仕上げラインの作業ミスを減らしたい」「製品キズの
クレームが急増した」「設計部と製造部の連携が良くない」「最終検査の
時間を短縮したい」など、企業が抱える課題を内部監査で重点的に取り上
げて解決や改善を行うための考え方です。

では、審査機関が行う審査においては誰が「重点」を決めるのでしょうか。
端的に言えば「審査員」ですが、その決定に大きく影響するのは先述の
「組織が抱える課題」です。

もちろん、審査員は自ら情報収集して課題を見出すべきですが、審査を受
ける立場から審査の活用を考えると企業側から「要求」すべきだと感じる
のです。

その要求に対して「それは審査員が決めます」というような発言をする
審査員は、良い審査員ではないと思います。企業が認識している課題を
念頭に置いて審査し、更に深い、或いは企業が気付いていない課題を見出
すことが審査員の目指すところだと思います。

是非、審査員に「重点的に審査して欲しいこと」を伝えて、審査を最大限
活用して下さい。
 

前回、ISO14001取得のメリットについて書きましたが、その視点はISO14001
規格の要求事項に対応することによるメリットでした、今回はISO14001を含
む各規格に共通する「外部審査を受けること」のメリットについて書いてみます。

私の考える外部審査を受けることのメリットは、「他者の意見に耳を傾ける
雰囲気作りに役立てる」ことです。

審査員という立場で様々な組織と接すると、「他者の意見」に対する組織の
受容性の違いを強く感じます。「気が付いたことはどんどん指摘して下さい」
と経営者からの言葉があっても、各部門の対応が閉鎖的であることは少なく
ありませんし、逆に、一見すると気難しい様子の強面部門長が「そのような
視点は持ってなかった」「一度試してみます」などと高い受容性を持ってお
られることもあります。

自分達の考え方や方法に自信を持つことも重要ですが、硬直化しないためには、
「他者の意見」に耳を傾ける雰囲気を醸成することも欠かせないと考えます。
だからこそ、利害関係の無い外部の審査員が、組織の内部に深く立ち入ること
のメリットは大きいのです。

そのメリットを最大化するためには、外部審査で出来るだけ多くの指摘や助言
を受ける(審査員から引き出す)ことを「良し」とする旨を経営者や事務局が
社内に示すことが効果的です。

審査先の受容性を論じる前に、審査員として価値ある指摘や提言が出来ている
か否かを省みるべきであることは承知の上ですが、受容性の視点で外部審査の
メリット(価値)を考えてみてはいかがでしょうか。
 

2015年版になって「事業との統合」や「環境パフォーマンス」など、事業
にとって「役立つISO14001」を目指すことが強調されています。ですが、
やはり「顧客要求があるから仕方なく…」「どうも登録のメリットが見出
せない…」という組織が多く、ISO9001よりもその傾向が強いと感じます。

もちろん、地球環境保護は誰しもが担うべき役割ですが、営利企業の経営
には「金銭的なメリット」が欲しいことも事実です。「不良率低減」や
「生産性向上」を環境目標にすることも有効ですが、どうしでも「それは
ISO9001でも出来る…」となってしまうのです。

経営者からISO14001の登録メリットについて質問を受けた時に、私は「①
法令違反の摘発による対応手間や補償等のリスク低減と、②環境関連法の
みならず労安法を含めて順法意識が高い会社であることを社内・社外に示
して社員のモチベーションを上げる」ことを登録の目的にしてはどうでし
ょうか、とお話します。

残念ながら、直接的な金銭的メリットを提示することにはならず、②につい
ては理想論的な要素も入りますが、どちらも企業経営上は金銭に換算するこ
とが可能であると考えています。

「何を目的にして運用するのか」を建前論・現実論のどちらにも偏り過ぎる
ことなく議論することが、EMSだけではなくQMSや他のマネジメントシステム
の「形骸化」を防ぐために必要ではないでしょうか。
 

「不良率の低減」や「生産効率の向上」等、様々な品質目標がありますが、
長年運用しているとマンネリ感が出てくるとことがあります。そのような
組織に対して、少し変わった品質目標の設定を提案することがあります。

「お客さんが“喜ぶだろう”と思うことを考えてみませんか」と。題して
「お客様の期待を上回るサービスを提供する!品質目標」です。

例えば、営業部門では「お客様への訪問の際に発注窓口の方だけでなく、
実際に納入製品や材料を利用していただいている製造部門の方にお礼を
伝える機会をつくってみる(申し込んでみる)」。或いは、製造部門では
「納入部品の梱包箱にお礼のメッセージを貼り付けてみる」等々、遊び心も
交えて考えてみると面白いと思うのです。

ですが、質問として帰ってくるのは「それは面白いかも知れませんが、
結果の判定と評価の方法が・・・」です。

そこで続けて提案するのが、顧客満足アンケートの活用です。いつもの
アンケートの中に、上述の取組みの趣旨の説明と合わせて「喜んでいただけ
たか」をお聞きする項目を加えてのです。そして、目標値は「肯定意見
(喜んでいただいた)70%以上」ではどうでしょう。

QMSの目的が「お客様に満足して喜んでいただくこと」を再認識でき、
品質目標や顧客満足調査の仕組みの活性化も目指せる、私の審査の裏技です。
 

QMSの審査対象から総務部を外したいという相談を受けることがあります。
EMSでは役割の多い総務部ですが、QMSでは「製造や品質には関係しない
から・・・」という声が多くなります。

そのような総務部ですが、QMSにおいて積極的に参画している事例もあります。

品質目標の立案。それも総務部の参画が消極的に要因の一つではないでしょうか。
そこである企業では、総務部員を一人ずつ他部門の品質目標の「活動要員」として
割り振っていました。活動要員と言っても直接的な製造や営業の業務は難しいので、
毎月の品質推進会議に参加して意見を出すなどするそうです。製造部では不良品
低減や生産性向上などに、営業部では新規開拓や既存顧客の拡販など一緒に取り
組んでいました。

また別の組織では、総務部の人員が内部監査の中心要員となっていました。営業
部門、設計部門、製造部門といったQMSの中核プロセスから距離を置く総務部
だからこそ、冷静に問題点や改善を見出すことができるようです。

どちらの場合も、普段「モノ作りやサービス提供」に触れることの少ない総務部
だからこその視点を活かし、結果的に「モノ作り」との意識的な距離も縮めよう
という発想です。特に、次代を担う総務部要員にとっては貴重な機会になるで
しょう。

QMSにおける総務部の参画が懸案になっているようであれば、ぜひ参考にして
下さい。
 

ブリジストン元社長の著書※を読みました。

経営層だけでなく一般社員にも向けた教訓や心得が書かれた本でしたが、
審査員としても考えさせられるフレーズがありました。原文のままではありません
が、以下のような趣旨でした。

・順調な報告は要らない、私にはトラブルだけ報告書してくれ
・トラブルの原因など問わない(責めない)、解決することに全力を注ぐべき
・原因を問い、責めると、トラブル報告が上がってこなくなる。それは、原因が
 修正されないことより怖い

「トラブル発生」と聞くと、直ぐに原因追究・再発防止・防止策のフォローと思い
浮かぶ自身が少し恥ずかしくなりました。どのISO規格文を見ても、トラブルを
起こした人の心情への配慮や、トラブル解決に向かう意気込み等に、直接的に触
れた個所はありません。

審査員としての立場に“どっぷり”と漬かり過ぎて、ついついISOマネジメント
システム(特にQMS)が企業運営の万能薬・特効薬と勘違いしている自分を感じ
ました。

論理と人情が調和した「人間味のあるマネジメントシステム」であることが重要な
のでしょうね。

「隠れてトラブルはあるようですね・・・、不適合報告書の記載内容が多く細かす
ぎて面倒なのでは?」などの会話が審査の場面でありますが、組織の内部では更に
踏み込んだ議論も必要なのだと感じるところです。

社外の審査員が安易に踏み込むべきではない領域だとも思っていますが、論理だけ
に傾倒することを戒めてくれる著書でした。

※『優れたリーダーはみな小心者である。』荒川 詔四 ダイヤモンド社
 

審査員としての新しい知識を得るために外部研修を受ける機会があります。
そこでは、他の審査機関に属する審査員や企業の事務局など様々な人と出会います。
立場は違っても、QMSなどISOに関する話題では同じ土俵です。

私達審査員にとっては、ISOが仕事そのものですから当然とも言えますが、
企業の事務局の人にとっては「特異」なことだと感じます。

長く企業に属して得た高度な知識や経験であっても、他の企業で即戦力として活かす
ことは簡単ではありません。組織や立場が変わっても活かせるスキルを「ポータブル
・スキル」と呼ぶそうです。まさに、移動可能なスキルです。

日本人と外国人の「品質」に対する考え方の違いから海外工場で苦労した日本人管理
者が、ISOに基づいて話すことで突破口を得たという話を聞いたことがあります。
「国際標準」が持つ説得力は凄かったそうです。

企業の事務局として、時には孤軍奮闘しながらご苦労も多いと思いますが、自社の枠
を超えて国内のみならず海外でも通用するスキルを持てる素晴らしいお仕事だと思って
います。
 

先日、あるベテラン審査員とのチームで審査に臨んだ際に、気付かされたことが
ありました。

審査最後の報告において、事務局の方が“最初の認証からのルールがまだ多く
残っており、なかなか見直しが進まない”と真剣な様子で話されました。
確かに、企業規模にしては少し複雑で重いルールという印象でした。

ベテラン審査員が話したのは“そもそも、ルールを守ることと、ルールを見直す
こと(ルールを疑うこと)とは、ほぼ逆の発想なのだ”ということでした。

そして、“ルールを守ることに関して、皆さん真摯に取り組んでおられるので
素晴らしいことですよ”と付け加え、“ルールを守る意識が強いぶんだけ、
ルール見直しのペースは遅くなるでしょうが、今のままで大丈夫ですよ”と
励ましの言葉を伝えたのです。

私なら“もっと見直しを進めるべきです”と“強く背中を押す”言葉になったと
思います。理屈や理論ばかりの改善策だけでなく、運営・運用する人の気持ちに
寄り添うような審査員になりたいと思った場面でした。
 

審査では「良い状況や結果」も報告書に記載します。良いことは、言われる方も
言う方も気持ちがよく、気持ちが和む瞬間です。ですが、報告書に書く以上は、
単に称賛するだけではなく組織の今後に活かせる内容としたいので、不適合と
同様にその記述には神経を使います。

例えば、クレームが前期から大幅に減少した状況に対しては、営業から製造への
引き継ぎの方法を変えたこと、或いは、製造中の品質管理者の巡回を増やしたこと、
出荷検査の判断基準のバラツキをなくす勉強会を強化したこと、など出来るだけ
多くの情報をお聞きしながら主要因を絞り込んで行きます。

良いことなので、「あの策も良かった」「あの活動も役立った」と全てに賛辞を
贈りたくなります。だからこそ、あえて「要因」に着目することが重要だと思う
のです。良いことにまで「理屈・理論」を持ち出すことは“無粋かな”と省みる
こともありますが、それも第三者としての客観的な視点の“使命かな”と思って
います。

管理者の皆さんも、良い結果に直面した時にこそ「なぜ・なぜ・なぜ」と、次に
つながるヒントを探してみて下さい。もちろん、“無粋”にならない程度に。
 

品質・環境共に2015年版で登場した「7.3認識」。
少し地味に扱われ気味ですが、個人的にはマネジメントシステムの真髄だと思う
程大ファンの項目です。

そんな「7.3認識」に対する企業の“認識”が、大きな企業(例えば社員300人超)
と小さな企業(例えば社員30人)で“妙な”ギャップを生んでいると感じるのです。

「7.3認識」は簡単に言えば、「組織の進むべき方向に対してそれぞれの階層や
役割の人達が“何をすべき”か、或いは“すべきでないか”を理解する」ことです。

この説明に対して、小さな企業の管理者の多くは「それは確かに大事ですね。
ですが、我社はまだまだです」と言い、大きな企業の管理者の多くは「それは当
然ですね。さすがに当社は(みな優秀なので)大丈夫です」と言います。

“妙な”ギャップとは、実際の審査で感じることと“逆”だからです。小さな組織
では、実践できるか否かは別にしても、皆さんよく「理解しています」。仮に理解
不足があっても「理解しよう」としています、実践できなくても努力しています。
ですが、大きな組織では「理解したくない」「理解したふりをする」方が少なく
ありません。

もちろん、「理解したくない」「理解したふりをする」人がいるなら諦めて下さい
ということではありません。

その状況があることを理解した上で「認識」の向上策や、マネジメントシステムの
運営方針を考えて行くことが大切だと思っているのです。

先入観を持たずに「認識」という観点で自組織を振り返ってみると、何をすべきか
いろいろな事が見えてくると思います。だから、私は「7.3認識」の大ファンなの
です。
 

2015年版移行から1年を経過した企業の審査が増えてきました。
移行時に新たに増えたり、修正されたりした仕組みや記録の運用状況を確認すると、
すでに「形骸化の芽」が出始めているケースが少なくありません。

例えば、目標を達成するための具体的な計画(6.2.2)の結果を評価するために
様式に加えた欄に、目標値の監視結果(6.2.1)欄と同じ内容が記載されている
ケース。組織の状況・顧客ニーズ把握・リスク対応(4.1、4.2、6.1)を、全社的な
視点と部門の視点で行うことを目的にそれぞれで実施していても、記載内容がほぼ
同じケース。

2つの事例の状況がNGだと言うわけではありませんが、運用しながら或いは
内部監査で「?」と感じて欲しいと思います(感じてもスルーされているのかも
知れませんが)。そして、制定時の目的や意図と照らし合わせみる、必要な修正を
考えて実施できれば形骸化の芽を摘むことができます。時間を重ねる程、摘みに
くくなります。まだ移行の「熱」が残っている「今」がチャンスです。
 

何度か審査を担当させていただいた事務局の方が、審査を終えての帰り際に
「もう歳ですから退任です。今回が最後の審査対応でした」とおっしゃいました。

企業事務局と審査員としては1年に1度のお付き合いですが、そのお人柄や社会人
としてのお仕事ぶりを尊敬していましたので驚くと同時に寂しくなりました。

私が企業で審査を受ける立場だった時は、審査員が企業や事務局にそれほど思い
入れを持つことはないだろう、何度か担当しても多くの審査先の1つに過ぎない
だろう、思っていました。ですが、立場が変わると大きく違いました。

初めて審査を担当する企業が続く緊張の中で(出会いの緊張感もこの仕事の
醍醐味ではありますが)、既知の企業の審査が入るとホッとします。事務局の
方の顔が浮かび、訪問が待ち遠しくなることも度々です。

審査ではしっかりと公平性を維持することは当然ですが、1年に1度のお付き
合いだからこそ企業・事務局の方との接点を大切にしたいと考えている審査員は
少なくありません。そのような審査員がいることを、頭の片隅にでも入れて
おいていただければ嬉しいです。
 

「営業部では顧客クレームは発生していません」と審査で説明を受けることが
少なからずあります。そこで、クレーム未満の顧客要望や社内不適合などの事例に
ついてお聞きすると、これも発生なし。最後には「我が社は製造業ですから」と
強い語気で説明を受けることもあります。

顧客の品質要求がどんどん厳しくなり些細なミスも許されず、顧客がクレームと
言えば自社に責任があるか否か不明な場合でも、想定までして丁寧に是正処置を
行う製造部門。一方、仮に連絡ミスで顧客を怒らせてしまってもお詫びで収束
すれば是正処置が行われない営業部門。

顧客満足を高めることを目指すQMS。その効果を最大限発揮して企業経営に
活かすためには、「顧客満足/不満足」や「クレーム/不適合」の定義を、
全社的な視点で考えることが必要ではないでしょうか。
 

内部監査の充実に悩む企業が多い一方で、内部監査が充実している企業では
ISOそのものが有効に機能しています。まさに、内部監査がISOの肝と
言われる由縁です。

今回は、内部監査と審査機関が行う外部審査の違いから、内部監査の有効活用
を考えてみます。

審査機関の審査とは、私なりに表現すると「規格に基づいて、組織のルールに
関する問題点を見出すこと」です。ですが、見出した問題点の「解決策を提示
する」ことは、コンサルタント行為になるため許されていません。「解決策
まで踏み込まない」立場を取ることで、少し引いた目線での客観性を維持して
いるとも言えます。

一方、内部監査では「解決策を提示する」ことが禁じられておらず、それが
大きな違いです。しかしながら、外部審査と同じような立場で行われている
内部監査をよく目にします。

公平性と客観性を維持するために自分の業務は監査しないことになっていますが、
やはり同じ組織ですから実情はよく分かると思います。その利点を活かさない
のは「もったいない」です。

岡目八目の意識で客観的に問題点を見出し、解決策を一緒になって考えるところ
まで踏み込めれば、内部監査の効果は更に上がります。

解決策に踏み込む時間が取れないという実情もあるかと思いますが、焦点を
絞ったチェックリストの利用など時間配分を工夫してみて下さい。

ちなみに、言葉としての「審査」と「監査」の意味をネットで検索すると
「審査=適否・優劣・等級などを決めること」「監査=正確性、適切性、妥当性
等を判断し、意見を示し、解決に導くこと」など説明されています。是非、
「解決」に導く内部監査を目指していただきたいと思います。
 

審査員になる前、知り合いの会社で「夢のある品質目標」に出会ったことがあり
ます。「夢」と表現するのは言い過ぎかもしれませんが、間違いなくユニークな
品質目標ではありました。

その品質目標とは「生産性の向上」です。???と思われたことでしょう。まさに、
ありふれた目標と言えますが、その達成度合いを測る指標(目標値)がなんとも
ユニークでした。

達成度合いを測る指標が「有給取得率」なのです。「時間当たり生産数量」などを
目標値に掲げて、達成度合いを測るケースが多いと思うのですが、「有給取得率」
とは驚きました。

社員は、報酬を得て仕事をしている訳ですから、生産数量を上げて会社の業績に
貢献し、会社の安定と報酬の安定を目指すという理屈はよく分かります。ですが、
生産効率を上げれば自分達が「休みやすくなる」という理屈の方が気持ちの盛り
上がりは違うと思います。

もちろん、やみくもに有給取得を追い求めても困りますので、その点は2015年版で
強化された要求事項である「目標達成のための具体的な活動重視」が効いてくる
ことも合せて話しています。そして、同じく新たな要求事項である「認識」にも
つながってきます。

その会社は20名程度で家族的な雰囲気でしたので、どの会社にも当てはめるには
デリケートな部分があるかも知れませんが、今でも審査先での余談として話す
ことがあります。

マンネリ化しがちな目標管理ですが、活性化させる工夫の一例としてご紹介しま
した。
 

マネジメントシステムにおけるPDCAと言えば、まず思い付くのは「目標」に
おけるPDCAでしょう。では、次はなんでしょうか。例えば、「内部監査」の
監査計画からはじめるPDCA、或いは「是正処置」における是正計画から始まる
PDCAなどでしょうか。

何れにしても、比較的「大きな」イベントや活動に対するPDCAのみを考えて
いるケースが多い、言い換えると日常のさまざまな活動に対してはPDCAを意識
していないことが多いと感じています。

例えば、製造着手前に「製造検討会」を実施している組織に、「検討会がどの程度
役立っていますか?」と聞いてみることがあります。

多くの場合「もちろん役立っている」とお答えになりますので、その「根拠」を
お聞きしてみます。責めるのが目的ではありませんので深掘りはしませんが、明確
な根拠が見つからないことが少なからずあります。そこで、「機会があれば、検討
会がどの程度役立っているのかを検証してみるのも有効ではないでしょうか」と
お伝えします。

検討会の開催タイミング、議題、参加者等の「計画P」通りに「実施D」して、
検討会での決議事項が、実際に製造トラブル回避や品質向上に役立ったか、或いは
検討の及ばなかった内容でのトラブルはなかったか等を「検証C」し、今後の
検討会の計画に「活かすA」ためのPDCAサイクルです。

当然ながら「役立つ」前提で考えられた活動ばかりですから「天邪鬼(あまの
じゃく)」的な見方をしましょうということではなく、時には「効果」に目を向け
るPDCAを意識しないと「改善の余地や可能性」見出しにくいと考えています。

規格の解釈としては少し広すぎるかも知れませんが、内部監査における監査員が
持つ視点としても有効だと思います。
 

審査では、規格要求事項6.2「品質目標」/「環境目標」の確認に合わせて、
7.3「認識」を確認することがあります。

既に2つの要求事項の関連性が頭に浮かんだ方も多いと思いますが、審査の場面
では問題が見つかることがよくあります。

新規格では目標を達成するための具体的な活動の計画が求められており、どの
企業も対応しています。そこで、計画内容の説明を受けると「耳触りのよい表現」
が並んでいるのですが、「実際に何をどうするのか」が見えてこないことがあります。

例えば、「○○部と○○部の連携を強化する」「顧客からの情報を正確に理解する」
「工程管理を密強化する」等です。

そこで「認識」の視点で、「各担当者は、自分が目標達成のためどのように貢献
すべきかを理解(認識)しているでしょうか」とお聞きします。実行性のある計画
であるか、単なる掛け声やスローガンだけの計画になっていないかを、確認する
ためです。その結果、計画に問題が見つかることがあります。

昔、悪いISO運用と審査の代表例として「品質目標を暗記する」が上がっていました。
これは「暗記する」のが悪いのであって「理解する」必要はあるのです。

しかしながら、審査員でさえも「今さら、審査で目標のことを聞いても・・・」と、
現場審査で目標について積極的に聞くことを避ける雰囲気があるのも事実です。

経営・事業・実務との融合を目指すQMSやEMSにおいては、6.2目標と7.3認識を
強く関連付けて理解するこが重要です。
 

QMSにおける不適合に対する是正処置について、つぶやきます。

審査にて、発生した不適合の一覧を見ながら「これらの是正処置はどのように」
とお聞きすると「全て是正処置不要と判断しました」と説明されることがあります。
或いは「今回は、○○と○○だけ是正処置必要と判断しました」等と。

よほど些細な不適合だったのだろうかと思い、詳細をお聞きして行くと、実際には
手順書の改訂や仕様書の修正などが行われているのです。「実際には、是正処置を
なさっているのですね」とお聞きすると「いえ、当社のQMSでは是正処置として
扱いませんので、是正処置報告書を発行していません」との説明だったりします。

規格の意図を簡単に言うと「同じことを繰り返さないこと」ですから、社内で是正
処置と呼ばなくても是正処置報告書がなくても(なんらかの記録があれば)規格に
反しているとは言えません。

ですが、そのような組織では往々にして「是正処置」と呼ばれない対応については
管理があまくなっていることが多いのです。例えば、再発防止(是正処置)が表面
的であったり効果の確認も曖昧だったり等です。

おそらくは社内に「是正処置扱いにすると、書類等大変だぞ。審査でも突っ込まれ
るし」という空気があるのではないでしょうか。審査機関としても反省するところ
ですが、やはり改善すべき状況と言えます。

とは言え、「面倒でも厄介でも、きちんと是正処置にすべきことはする」等の精神
論では解決に向かい難いと感じます。なぜなら、全社的な認識であることが多いから
です。

実効性のある改善策の一つは、処理の仕組み(記録の記載、承認ルート・押印等)
の簡素・簡略化の検討でないかと思います。

規格でも「程度に見合った是正処置」とあります。大きな事象にも、小さな事象に
も対応できる仕組みは「小さな事象向き」にすることが効率的だと思っています。
大きな事象の場合には、必然的に追加等で補填するからです。
 

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